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2013年09月14日

東京国税局では今年の7月から、不動産所得の申告者に対し「決算書(収支内訳書)の内容についてのお尋ね」と題する文書の送付を始めたようです。

調査をしないまでも、納税者自ら見直しを行ってもらい、誤りがあれば自主的に修正申告を促すことを目的としたものです。

不動産所得は最初の年こそ減価償却の計算など面倒ですが、収入や経費の仕訳もそう複雑ではなく、慣れれば一般の人でも比較的簡単に決算書が作成できるため、2年目からは自分で申告をされている方が多いのではないでしょうか。

確定申告期の無料相談をやっていても、
期末簿価を記載していないため延々と減価償却を続けておられる方や、
自宅の固定資産税が含まれた納付書の金額をそのまま租税公課で処理しておられる方などを時たま見受けますので、
自主申告となればその誤りの数はもっと多いと思われます。

お尋ね事項には、収入の内訳、租税公課の内訳、修繕費の内訳、借入金利子の内訳、減価償却費などが詳しく記載するようリストアップされているようです。

たとえば租税公課などはその種類と物件所在地、支払額及びその必要経費算入額などを記載しなくてなりません。

こうなると、これからは少額の申告だからといっても、いいかげんに申告することはできなくなりますね。

E−Taxが便利になり自主申告は今後ますます増えていく反面、
小規模の不動産所得に税務調査の人手を割くことはこれからも不可能に近いと思われます。

このお尋ね書もある程度の実績が上がれば、他の国税局でも実施されることはほぼ間違いないでしょう。

毎年同じようにやっている決算整理も、今一度見直しをしておいたほうがいいかもしれませんね。

税金のことなら福岡市の田中秀樹税理士事務所

2013年08月22日

相続税の基礎控除引き下げの見合いで小規模宅地等の評価減の特例が拡充されることになりました。

第一に特定居住用宅地等の80%の評価減ですが、従来の限度面積240平米が330平米に拡充されます。

これは例えば1平米当たりの路線価が44万円の土地であれば、
90平米(拡充された面積)×44万円×80%=3,168万円が減額幅として拡充されることになります。

これは大きいですね。
相続人3人の場合の基礎控除引き下げによる課税対象拡大額にほぼ匹敵します。

第二にこれまで特定居住用宅地等(240平米→改正後330平米限度)と特定事業用宅地等(400平米限度)の両方ある場合、
減額特例対象面積は合計で400平米までとされていましたが、
改正後は併用が認められるため、合計で730平米までが80%の評価減の対象とすることができるようになります。

こちらも上記の試算で、フルに活用することができれば、上記の例で
330平米(拡充された面積)×44万円×80%=11,616万円が減額幅として拡充されることになります。

この見直しも基礎控除や税率構造の見直しと同様に平成27年1月1日以後の相続開始分から適用です。

税額に非常に大きな影響を及ぼす改正ですので、対象になりそうな方は特定事業用宅地等の適用要件などを再度確認しておく必要がありそうですね。

また、ややこしかった適用限度面積の調整計算が今回少し緩和されますが、
貸付事業用宅地等の限度面積200平米(50%評価減)については従来通り、調整計算が必要です。

なぜ、用途によって400平米、330平米、200平米と適用面積を制限するのかよくわかりませんが、
どうせなら、きりよく特定事業用も、特定居住用も、貸付事業用もすべて400平米まで拡充して併用ありの80%評価減にしてほしかったですね。

2013年08月01日

しばらく間が空きましたが、相続税改正の続きです。

平成25年度税制改正では相続税の税率構造が現行の6段階から8段階に細分化し、2億円超3億円以下の部分は45%、6億円超の部分についてはさらに55%のランクが設けられました。

これは法定相続分に応ずる各人の取得金額の税率区分ですから、2億円を超えてくるのは配偶者、子供二人の相続人3人のケースで基礎控除後の課税遺産総額が4億円超の場合になります。
やはりある程度の富裕層がターゲットですね。

そして今回は贈与税の税率も構造も見直されています。

贈与税では従来の1000万円超の部分の税率ランク50%を、

1000万円超 1500万円以下 45%
1500万円超 3000万円以下 50%
3000万円超         55%

の3段階に細分化しています。

さらに、直系尊属からの贈与についてはこれより緩和された税率区分が設けられました。

20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産に係る贈与税の税率構造
    現行         税率         改正案       税率
200万円以下の金額   10%     同左   
300万円以下の金額   15%     400万円以下の金額   15%
400万円以下の金額   20%     600万円以下の金額   20%
600万円以下の金額   30%     1,000万円以下の金額  30%
1,000万円以下の金額   40%      1,500万円以下の金額  40%
1,000万円超の金額    50%       3,000万円以下の金額  45%
                         4,500万円以下の金額  50%
                        4,500万円超の金額    55%

税率区分からみると、一般贈与の税率も下がる贈与税節税の狙い目ゾーンは1000万円から1500万円の間でしょうか。

例えば1500万円の現金贈与をすれば、今までは470万円だった贈与税が、改正後は一般贈与で450万5千円に、さらにそれが、父母や祖父母からの贈与であれば、366万円に減少します。

ただ、確かに直系尊属からの贈与で104万円の減税幅は大きいと思いますが、現金はともかくこれが不動産の贈与であれば、不動産取得税や登記費用もかかりますからやはり高額贈与は躊躇してしまいますね。

また、同一年で一般贈与と直系尊属からの贈与が両方ある場合、基礎控除の調整計算をしなくてはなりませんので、さらにややこしくなります。

多少緩和されたといっても、贈与税はやっぱり高いということをあらためて実感させられますね。
そして申告書はさらに複雑になり、戸籍謄本などの添付書類が増えるのだろうなと思ってしまいます。

この税率改正、平成27年1月1日以降の相続、贈与分から適用です。