毎年、年が明けると早々に申告の書類を持ってきて下さる方がいました。

今年も例年通り書類を預かり、一通り申告書類を仕上げたので質問をするため何度か電話したことろ繋がらず、
再度電話しようと思っていた矢先、娘さんより「亡くなりました」と電話がありました。

今では珍しく、自分で元帳と振替伝票を手書きで作成され、
パソコンで作成された元帳しか見たことのない私にとっては、
同じ数字でも生きた数字に見え、
実際に伝票と元帳の流れやその他もろもろ沢山のことを教えてくれる生きた資料でした。
その書かれた字と、まとめられた資料からはその方の几帳面さが伺え
鑑定士ではないですが、手袋をして書類を触りたくなるほどで、
思わず「拝見させて頂きます」と心の中で思いつつ仕事をさせて頂きました。
昨年も高齢につき入院、通院をされていたようですがミスもなくきれいな元帳でした。


なので私のなかで、この方の申告が終わるとまだまだ申告の仕事はたっぷり残っていますが、
ひと段落済んだようにすがすがしい気分になっていました。

「袖振り合うも多生の縁」と言う言葉がありますが、
見知らぬ人とたまたま道で袖をすり合わせるというのも、
前世からの深い因縁によるものであるという意味で、
人と人との関係は単なる偶然によって生ずるわけではなく、
大切にしなくてはならないという仏教的な考え方ですが、　　
今世にお会いできたことを嬉しく思い、
また来世においてもお会いできますよう願いたいと思わせる方でした。

もう来年お会いすることも出来ないのかと思うと悲しい気持ちで一杯になりますが、
本当に貴重なお勉強をさせていただきましたことに心より感謝申し上げますとともに
ご冥福をお祈りいたします。